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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

が、ついに艇は、月の面にふれた。とたんにガスの放出はとめられ、艇は滑走で前進する。艇の通りすぎるうしろには、もうもうと砂煙があがって、まるで艇が火災を起したようだ。

やがて艇は停った。その下三分の一が、雲の海の砂にうずもれた状能で、停止した。

「やれやれ。無事着陸したぞ」

「えっ、無事着陸しましたか。月世界へついたんですね」

「もちろんのことさ。ほかのどこへ着陸するものかね」

「ああ、うれしい。さっそく地球にのこして来た家族へ電話をかけたいものだ」

「それは間もなく許されるだろう。その前に本艇が着陸した目的の仕事を片づけてしまわねばならない」

「その目的というのは、何ですね」

「今に分るよ。見ておいで」

高級艇員と、こんど初めて月世界旅行について来た若い艇員との間に、こんな話がとりかわされている。

正吉少年の姿が見えない。

いや、いや。装甲車が用意されているそばに、彼は立っていた。

勝手がちがう話

「さあ、乗った」

そういったのは、カンノ博士だった。観測班長だ。

博士も正吉も、さっきまで着ていた空気服をぬいでいた。装甲車に乗る者は、それを着ないでいいのだ。