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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

「しかし博士は十四、五年前にどうしたわけか行方不明になったままで、その後消息を聞いたことはなかった、するともしや……」

博士の声がかすれた。

「すると、この人骨はおじさんの骨なんでしょうか。おじさんは、たしか探検に出かけたまま帰らないといっていましたがこの月世界へ来ていたんですね。しかしおじさんは、なんというなさけない姿になったものでしょう。おじさん、おじさん」

正吉は人骨のそばにひざまづいて、涙をぽろぽろと流した。

これには、他の人たちもげんしゅくな気持におそわれて、もらい泣きをした。

その中でカンノ博士はちらばった人骨をよせあつめ、頭蓋骨の骨片をハンカチーフの上にのせていたが、その手をとめて急に目をかがやかした。

「ちょっと、これはおかしいぞ」

「なにがおかしいのですか」

「この人骨はね、君のおじさんの毛利博士ではないよ、安心したまえ」

「ええッ、どうして、そんなことが分るんですか」

正吉は、ふしぎに思って、聞きかえした。

「ちゃんと分るんだ。この人骨は現代の日本人の骨ではない。ずっと古い昔の人骨だ。それも百年前ではない。すくなくとも五万年ぐらい前の人骨だ。