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さんじゅうねんごのとうきょう

三十年後の東京

海野 十三

「少年読売」1947(昭和22)年10~12月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 13,731 字 · 28 页

青空文庫

「どうしました、正吉さん」

と、大学病院長のサクラ女史が、うしろからやさしく正吉の顔をのぞきこんだ。

「ぼく……ぼく」

と正吉はいいよどんでいたが、やがて思い切っていった。

「ぼく、急にぼくのお母さんに会いたくなりました。ぼくがあの冷凍球の中にはいるとき、ぼくのお母さんは五十歳でした。ああ、それから三十年たってしまったのです。するとお母さんは今年八十歳になったはず。お母さんは日頃から弱かったんです。お母さんは、とても、今まで長生きしているはずはない。ぼく……ぼく……もうお母さんに会えないだろうな」

正吉少年のこのなげきは、たいへん気の毒であった。カニザワ氏とサクラ女史とカンノ博士の三人は、ひたいをあつめて何か相談していたが、やがてカニザワ区長が正吉にいった。

「もしもし、正吉君。われわれに、すこし心あたりがあるんです。うまくいくと、君のお母さんに会えるかもしれませんよ」

「えっ、ほんとですか。しかし母は、もう死んでいますよ」

「いや、そのことはやがて分りましょう。これから町を見物しながら、そちらへご案内してみましょう」

人工心臓

正吉は、区長たちからなぐさめられて、すこし元気をとりもどした。