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さんじゅうねんごのとうきょう

三十年後の東京

海野 十三

「少年読売」1947(昭和22)年10~12月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 13,731 字 · 28 页

青空文庫

胸の中から二本の管が出て、この人工心臓につながっている。一方は赤くぬってあり、もう一つは青くぬってある。赤い方は、きれいな血がとおる動脈、青い方は静脈だ。そして人工心臓は、その血を体内に送ったり吸いこんだりするポンプなのである。

昔あったジェラルミンよりもっと軽い金属材料と、すぐれた有機質の人造肉とでこしらえてあるのだと、専門のサクラ女史が説明してくれた。

「こんなものをぶら下げていると、かっこうが悪くてね。正吉や、お前が見ても、へんでしょう」

と、母親は笑った。

なつかしい母親の笑顔だった。

「かっこうなんか、どうでもいいのですよ。その人工心臓の力によって、もっともっと長生きをして下さい」

「お医者さまは、あたしの悪い心臓を人工心臓にとりかえたので、これだけでも百歳までは生きられますとおっしゃったよ」

「百歳とは長生きですね」

「いいえ。お医者さまのお話では、もっと長生きができるんだよ。百歳になる前に、もう一度人工心臓を新しいのにとりかえ、それからその外の弱ってきた内臓をやはり人工のものにとりかえると、また寿命がのびるそうだよ」

「じゃあ、お母さん、そういう工合にすると二百歳までも、三百歳までも、長生きができることになるじゃありませんか。