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さんあくにんものがたり
三悪人物語
山本 周五郎
忍術千一夜 第二話
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,990 字 · 58 页
姐さんは落ちていた釵を拾って、やけに髪の根を突つきながら立ち上がった。
「若旦那はどうしたか知らないかい」
「あら御存じなかったんですか、もうさっきお帰りになりましたわ」
お杉は店へ出ていった。
蓑賀の御前を送り出したお杉の姐さんは、その足で小走りに表の土間へかけつけた。そこでは権頭に中将に杢の三人が飲んでいる、だいぶいい機嫌とみえて鼻唄などを唄っていたが、姐さんの顔を見ると盃をおいた。
「いま脇の木戸から奉行所の役人が出ていった、蓑賀参蔵という肥った侍だよ、木挽町の与力屋敷へ帰るんだからね、三人でいってしめておいで、今夜はたっぷり持っているはずだ、ぬかるんじゃないよ」
「合点です」
三人はこう云うなり立ち上がり、互いにうなずき合って出ていった。
市町から大通りへ出て北へ、かなり更けた街を蓑賀殿がひとり歩いてゆかれる、材木町、神明町、九間町、柳町、……燈火はないがよい月夜だ、蓑賀殿にはなにか気がかりなことがあるとみえ、首をかしげたりひとり言を云ったりしながら、錦町の角を右へ曲がられた。その時である、後ろからつけて来た三人のうち、杢がすっと蓑賀殿を追い越して、