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さんがつのだいよんにちよう

三月の第四日曜

宮本 百合子

「日本評論」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,826 字 · 42 页

青空文庫

その真中で、綾子が水色っぽい一つを手にとって、

「どれ? いいけど、地味だねえ」

わきに立っている娘の髪の上にもって行って眺めているのであった。中高なのと頬の上のところに黒子が一つあるのとで綾子の派手な顔立ちは人目に立ったし、そんなにしてリボンを選んだりしている動作のうちにも、いつも見られる自分を意識しているポーズがあるのであった。

「こないだ三越でとっても素敵なの見たわ。繻子でね、片方は鼠っぽい銀色、裏は薄桃色で、モダンだったわ、一尺六十八銭よ」

行きすぎて暫くすると弓子が腹立しそうに、

「ふん」

と云った。

「見なさい。ピクニックの話がちょっと出たらもうあれだ」

綾子さん、華宵の女のようだわ、ととりまく娘もあって、サイはそうなのかしらと距離のある心持でいたが、弓子の綾子ぎらいは容赦なかった。向いあって喧嘩するというのではなく、製図板を並べながら互に決して口をきき合わないという形で継続されているのであった。

「けさだってさ、体操のとき、わざわざ直させたりしてさ、何ていけすかないんだろ」

「そうだったかしら」

「どこに眼がついてんのよウ」

ふっと笑えて来たら、おかしさがとまらなくなって、サイは、ああいやだ、いやだ、と手の甲で涙をふきながら肌理のこまかい顔を赤くして笑いこけた。