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さんがつのだいよんにちよう
三月の第四日曜
宮本 百合子
「日本評論」1940(昭和15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,826 字 · 42 页
ピクニックのあとから急に夜勤がはじまったりしてまた忙しくなって来た。荒川堤へ行ったのはよかったが、昼から雨になって、みんな裾をはしょって、手拭を帯の上へかけて遑しく帰った。
キコ・キコ・キコ・キコとポンプから洗濯盥へ水を汲みこみながら、サイはその日の情景を断片的に思い出した。その町筋には鋳物工場がどっさりあって、洞のように暗い仕事場の奥で唸りながら火焔があがっていた。古腹がけのどんぶりのところだけ切ったのを前に下げて、道端の炭殼の中を箸でせせっていた神さんたちの姿。黒くって、震動しているようなその町の中を出はずれたら堤はぽーっとなるほど遙々とのびていた。川は本当に気持がよかった。
「川口へ来て世帯を持ちな、暮しいいぜ」
まだ独身で、ここから通っている飛田がそんなことを云った。誰かが路の両側を見まわしながら、
「だってえ。どっち向いたって真黒けな人ばかりみたいなんだもの」
「それがいいのさ。金気がしみついてるから虫がつかないよ」
綾子が細かいめの紫と白の矢羽根の袷で、パラソルを膝の前へつきながら河原で跼んで流れを見ていた姿が、シャボン泡の中へ甦った。
あらかた洗濯物がすみかかったとき、婆さんがひょいと裏へ首を出した。