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さんがつのだいよんにちよう

三月の第四日曜

宮本 百合子

「日本評論」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,826 字 · 42 页

青空文庫

便所と手洗いの間にはさまれているこの二畳はおかしな部屋で、どだい壁も天井板もないところであった。低い頭の上から、三方ぐるりと白地に紋がらの浮いた紙貼りで出来た部屋であった。おそらく素人細工のその紙貼りは、柔かくぶくついている上に天井にも横の方にも汚点が滲んでいて、初めてそこに坐ったとき、サイは鼠の小便のかかったボール箱に入ったような気がした。そして、この頃の陽気になると、その部屋はほんとにボール箱みたいな糊の匂いがするのであった。

片隅に積んである蒲団を斜かいに敷いて、サイは横になった。

とろりとしたと思うと、部屋のすぐ外の狭苦しい空地へ、ワーッと鬨の声をあげて、うちの子供が近所の仲間と走りこんで来た。突カン! 突カン! 何だイ! 支那兵の癖して。負けなけりゃ遊んでやんないから。ワーッ。竹の棒でうち合う音がする。遠くなったり、近くなったりする夢と現の境でその声をきいていると、どの子か、駈けまわっている拍子にいやというほど二畳の窓へこけかかって、格子なしのガラスがこわれそうな音を立てた。

サイは、夢中でその騒ぎから身を庇うように蒲団を頭まで引かぶった。