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さんがつようかはおんなのひだ

三月八日は女の日だ

宮本 百合子

「改造」1931(昭和6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,115 字 · 21 页

青空文庫

もう聴衆は一人も笑っていない。

日本女は心に一種のおどろきを感じつつあたりの顔々を眺めまわした。どうだ、この気の揃いようは! 演壇に吸いよせられ非常にいきいき反応しつつもう始って三時間近くなるだろう演説をきいてるのは、いわゆる自覚ある労働者、三月八日の女主人、労働婦人及赤ネクタイをつけた彼等の前衛的後継者たちばかりではない。

細い亜麻色のお下髪を小さい背中にたらして、水色縞の粗末なフランネル服を着ている少女はずっと日本女の右隣に坐っている。しずかに行儀よく坐って話をきき、あまり数字ばっかりマイクロフォンから鳴り響いた五ヵ年計画の話の時は右手をフランネル服のポケットにさし入れ何か粒々したものを掌へ、それから口へそっと入れた。

咳がしたくなる。少女は彼女のまだ性別定かならぬ喉笛のむず痒さで演説の邪魔をしてはならないと知ってる。細い手の指をかためて口を押えて用心深くやっている。

この明かに未組織な少女(ピオニェールではない)の伴れは祖母さんだ。生れてから婦人帽というものは頭にのっけずにきた、そして、自分の家の台所でか他人の家の床の上でか手と足とで働きつづけてきたという風な祖母さんだ。