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さんがいばんれいとう

三界万霊塔

久生 十蘭

「富士」1949(昭和24)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,716 字 · 39 页

青空文庫

がひどすぎて張りあう気にもなれない。

ともかく船を岸へ寄せて採取にかかったが、その辺の暗礁は両側へ急傾斜しながら深くなっているという性の悪いヤマで、貝はといえば屯三百ドルせいぜいの、運搬費のほうが高くつく黄貝の駄物ばかり。水夫の堀を偵察にやってみると、船団のほうはすごく優秀な貝床につき、十二、三尋の有利な海深で無限に真珠母を揚げているというので、まず山崎が逆上してしまった。

船長室へ集って、船団を水道から退却させる方法はないものかと、慾と悪意で黝ずんだギラつく顔を突きあわせて相談をはじめたが、基地を持たない船団になにより大切なのは水なのだから、水の手を切ってやるのがいちばんだということになり、それとなくようすを見ていると、船団ではこっそりボートを出して海辺族の部落の井戸から飲み水を汲んでいることがわかった。

「井戸じゃ、やりようがない」

深尾が投げかけると、山崎は、

「ないなんてことはない。船に防腐用の昇汞があるから、あれをぶちこんでやれァいいんだ」

とひとりできめ、日暮れを待ってなにか井戸へ仕掛けをしに行った。

翌日の午後になると、船団の活動が不活溌になり、五隻ばかりのラガーが母船のそばへ錨をおろしてしまった。