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さんがいばんれいとう

三界万霊塔

久生 十蘭

「富士」1949(昭和24)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,716 字 · 39 页

青空文庫

午後、船を礁湖に入れて、椰子の間に木箱をつないだ食卓をつくって待っていると、七時ごろ、三隻のボートが夕闇にまぎれて礁湖へ入ってきた。ダイバーを呼んだつもりなのに、上ってきた十人はラガーの船長ばかりなので呆気にとられたが、ちがうともいえないので宴会をはじめた。

料理は海亀や沙魚のフライ、牡蠣、パパイヤのフレンチ・サラダが出た。船長たちは三月ぶりで陸を踏んだと子供のように喜んで、濠洲ウィスキーとお持たせの正宗をチャンポンに飲んではしゃいでいたが、どうしたのかバカバカしく早く酔い、一時間もすると満足にあぐらをかいているものはいなくなった。ごろごろその辺へころがり、脳溢血の衝撃にやられたように薄目をあけたまま大きな鼾をかいていた。

翌朝の七時ごろ、船長達がそちらにいるのかと母船から信号で訊いてきた。昨夜、十時ごろ帰ったと返事をしてやると、母船の事務長がランチでやってきて、じつは船長達が一人も船団へ帰って来ないのだと心配そうな顔でいった。それはたいへんだ、探して見ようということになって、足立がいっしょに行って環礁の外側をまわって見ると、入口に近い離礁の岸に三隻のボートが散々に壊されて漂着しているのを発見した。