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さんがいばんれいとう
三界万霊塔
久生 十蘭
「富士」1949(昭和24)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,716 字 · 39 页
「なるほどそのせいだったんだな」
たしかに気候のせいらしい。得体の知れない違和の原因をつきとめると、急に晴れ晴れした気持になった。
「そうとわかれば、落ちこんでいることはない。明日から会社へ出よう」
それにしても戸田のやつはひどく老いこんだものだ。もう長いことはあるまい。娘の結婚式を見るぐらいがせいぜいだろう。
「三界万霊塔か。馬鹿なことをいつまでもおぼえているもんだ」
戸田のいうとおり、自分らが殺した人間を嘲笑するような、あんな乱暴なことをしたのはわれわれぐらいのものかもしれない。
ブルームの町の日本人墓地に、五尺もある石の五輪法界の万霊塔が建っている。盂蘭盆の夜、さんざんに飲んで酔ったあげく、戸田が、
「この石の卒塔婆はいい恰好をしているじゃないか。あいつらも海の底で淋しがっていると可哀そうだからネ、これとおなじやつをこしらえさせて、貝床のそばへおッ建ててやろうじゃないか。三界万霊塔が十二尋の海の底に立っているなんて想像しただけでも詩的だネ。こんなものであいつらを慰問できたら安いもんだからネ」
と、ふざけた思いつきを披露した。
深尾も山崎もむやみに笑い、ぜひやろうということになって、日本人の石屋に同じものを注文し、次のシーズンに現地へ運んで行って、甲板で卒塔婆を挾んで記念撮影をしたうえ、青木が貝床のそばの