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さんりょうきょう
三稜鏡
佐左木 俊郎
(笠松博士の奇怪な外科手術)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,347 字 · 42 页
てあるのだった。全く悪魔の課題のようで、可哀想ではあったが、彼の病気を癒すためには仕方がなかった。が、しかし、彼は熱心にその課題をやるのだった。両腕を血まみれにして、鼻が肉につきそうになるまで眼を近寄せながら、神経を探り血管を探っているのであった。そして彼は精も根もなくへとへとに疲れて、その二片の肉の間に顔を突込んだまま殆んど気を失って了うのであった。
私達は十分に看視していた積りであったが、西谷青年が或る女の患者に恋情を寄せていたことを知らずにいたことは、私達の大きな落度であった。西谷青年は勿論のこと、他の患者達も、自分から進んでなど決して這入ったことの無い実験室から、女患者の悲鳴がするので、大急ぎで飛んで行って見たのであるが、その時にはもう遅かった。西谷青年は、女患者の咽喉部に大きな抉穴をあけて、大腿部から抉り取った肉を、その穴に埋めようとしているのであったが、女患者はもう死んでいた。
「こらっ!」
私はそう呶鳴りながら、彼を撲り倒して置いて、その間に、死体と人形とを更えて置いたのであるが、そんなことをしてももう無駄であった。私は、彼に、その人形によって、自分の手の不器用さを徹底的に知らせようとしたのであったが、彼は意識を取戻すと、矢庭にその人形の首を浚って逃出したのであった。