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さんりょうきょう

三稜鏡

佐左木 俊郎

(笠松博士の奇怪な外科手術)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,347 字 · 42 页

青空文庫

「それじゃあ、貴方の名前は、笠松――と云うのか?」

署長がそう横から訊いた。

「笠松――と云うのだそうです。西谷の前住所がわかったので、何か手掛りがあるかと思って刑事をやりましたら、刑事は、この老人を拉れて来たのですが……今来たばかりなものですから……」

司法主任はそう老人に代って答えた。

「それで、貴方は外科医なのですか?」

「外科医だなんて、私あ、そんな、立派な人間じゃありません。私は人形師ですよ。人形造りなのですよ。西谷さんを知っているのは、西谷さんが私の家の二階に下宿をしていたからでして……」

=暗転=

西谷青年は、真面目で而も物静かで、私達の二階へ越して来られた当座など、荒い息一つ立てずに、八九時間も机の前に坐っているようなことは珍らしくなかった。無口な上に、勉強家でもあり、最初は親しみにくかったが、次第に打解けて来ると、私や娘と話をしに自分の方から降りて来るようになって、私達はだんだんと家族的な感じが濃くなって来た。部屋だけの約束だったのが、何時の間にか食事まで一緒にするようになり、そして私の娘は、私の知らない間に、西谷の穢物などまで洗ってやるようになっていた。