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さんりょうきょう

三稜鏡

佐左木 俊郎

(笠松博士の奇怪な外科手術)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,347 字 · 42 页

青空文庫

そして私は、周囲が次第に闇に包まれて来るのを幸いに、他人目を偸むようにしながら、箱の底からその包みを一つ取出しては捨て、又一つ取出しては溝の中へ投込んだのであった。

私の手紙で、西谷は、早速田舎から出て来た。

「何故もっと早く知らしてくれなかったのです。病気になると直ぐ知らしてくれたら間に合った筈じゃないですか? 死んでから知らして貰ったって何になるんです?」

西谷は私の顔を見るなりそう云って責めるのであった。

「それもそうだが、まあ、怒らないでくれ。死ぬには死んだが、しかし、そこがさすがは笠松博士だって。二階へ行って御覧! 以前のようにちゃんと甦っているから」

「二階に? 僕の部屋にかね? それで、死んだのも、嘘なのですか?」

「兎に角、二階へ行って、何んなものか、笠松博士の腕前を見ておいで」

私はそう云って銭湯へ逃出して了った。西谷は直ぐ二階へ駈上って行った。そして、生前の娘に似せてある人形は、酷く西谷を驚かしたに相違なかった。私が銭湯から帰って来たとき、西谷はまだ二階にいて、その人形へ、何かしきりに話かけていた。

「僕は何時までも、何時までも、貴女のお父さんと一緒に、貴女の傍にいて……」