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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
「東京日日新聞」1918(大正7)1月5日~17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 页
それを見張りながら、隙を覗っては、木材を盗んで行こうとする者の番をするのだから、彼は五分と一つ所にじっとしてはいられない。
柔かい泥を蹴立てて、彼は仕事場中を、叱※して歩かなければならないのである。
仕事の方が、だんだん纏まって来るにつれて、彼は自分の家を離れているのを、万事に不都合と思い初めた。夜廻りをするにも、樹木に水を遣るにも、傍にいなければ思うようにならない。
そこで、或る日、彼は女房に「下小屋さ、引越すべえ」
と云った。下小屋というのは、仕事場の片隅に立っている小屋で、見廻りに来た者の休み処と道具のしまい処をかねたものである。女房も、そうなれば、飯を運ぶ心配もいらないで楽だと思ったから、それが宜かろうと云った。もちろん山沢さんが、そうしろと云いなすったと思い込んでいたのである。
それで、その次の日彼は、仕事場へ行きがけに、背負えるだけのものを、頭を乗り越すほどかついで来た。それから、昼の休みにもう一度戻って、今度は荷車に夜具から、鍋釜までのせて引いて来た。子供を負ったおまさが、三分心のランプや下駄や、壜(びん)を両手に下げて二三度往来すると、もう彼の引越しは済んでしまった。