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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
「東京日日新聞」1918(大正7)1月5日~17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 页
言葉以上に、はっきりと彼は悟っていたので、それとなく仄(ほのめ)かされる後事に就ても、彼は悲しい謙譲と、愛とに満たされながら真面目に耳を傾けた。
そして何かの折に、
「貴様の生きているうちは、墓掃除をたのんだぞ」
と云われたとき、彼は黙ってぴったりと、畳の上に平伏した。
十一
そんな風になってから、三郎爺と山沢さんはほんとに「仲よし」になった。もう山沢さんが彼に対する愛情を押えなくなったのだともいえる。
飯まで自分の床の傍で一緒に食べさせながら「旦那様はよく世の中のことを語りなすった」のだそうだ。世の中のことというのは山沢さんの人生観のようなものででもあったろう。
無学な彼には、一言一語よく訳の通じない言葉はあっても、旦那様の「思惑」は、自分のもののように、よく分った。
山沢さんが、泣きたいような心持のときには、彼も何だか気が沈む。情ない、「おっちみるような」気がする。
けれども、山沢さんが得意に昂奮しながら、功名話をするときには、彼もまた自分と山沢さんの見境がなくなるほど、心が嬉しかった。
世界中の人間に、どんなもんだ! と云いたいように意気揚々とする。