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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
「東京日日新聞」1918(大正7)1月5日~17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 页
山沢さんの棺と一緒に地の下へ埋まってしまった自分の未来に対して、何を希望する気もない。ただ旦那様の盛だった時分に、その恩寵を一身に受けた自分としての光栄と、誇りの追想が、これから先の生活にたえ得る矜恃を彼に与えたのである。
けれども、もちろん彼はこんな風に、自分の心について考えるのでも、云うのでもない。
「俺の強情を、取っぷせたなあ旦那様一人だハハハハ、今時の者にゃあ、ちいっと手強(てごわ)え爺だな」
主人を失ったブルドッグのように、彼は傲然と哄笑する。
淋しい淋しい心持が、シンシンと胸に滲み込んで来ても、旦那様のお墓の前でなければ、彼は涙を見せない。
俺の涙を見せてやる者あいねえという彼の心持は、彼のみが知り、旦那様のみが知っていたものであったことを、私は彼のためにいとおしく思う。
とにかく旦那様が亡くなった四月後に女房のおまさが熱病で死んだ。娘を奉公に出し、彼はきたない小屋の中で幾年にもない、気の滅入る秋を迎えた。
そして、その年が豊年だったのが、山沢さんの大仕合わせと、彼の大不仕合わせになったのである。
十二
幾年振りかの豊作だったので、山沢さんの小作米が、「ふんだん」