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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
「東京日日新聞」1918(大正7)1月5日~17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 页
そこに何の矛盾も感じない。
そして、今なおその味の忘られない一つの計略によって、しばしば貧乏な百姓の彼としては、異常な美味にありついた。それはこうである。
なにしろ、その頃は狐が人間より遙に多い。それ故、どうしても畑地や田が彼等に荒らされる。春から穴に入る狐は、ちょうど収穫時頃から、暴威をたくましゅうする。そこで、彼の村の一つの習慣として、子を育てている狐を見つけたら、その穴へ、強飯(こわめし)や薯(いも)の煮たのやらを持って行ってやる。その強飯や薯の煮ころばしで、狐の好意を釣出す訳なのである。
ところで、三郎は、そこへ気がついて、同志を募っては、原っぱ中に子持ち狐を探しに行く。いくらその時分でも、人間に面と向えば狐の方で逃げるのだから、なかなか子持ち狐、それも強飯と薯の煮たのを供えられる資格のある、生れたての子狐を伴れたのには出会わない。けれども、四日五日と欠かさず歩きまわっているうちには、一つぐらいは見つけられる。そうなると、母親に注進する。注進したばかりではなく、必要があれば現場をも見せる。
そして、作ってもろうた施物を持って穴へ行く彼は、十分の一ぐらいのお裾分けを置いてやったなり、あとはさっさと、自分達のお腹の中へ施してしまうのである。