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「したじき」のもんだい

「下じき」の問題

宮本 百合子

こんにちの文学への疑い

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,838 字 · 20 页

青空文庫

そして日本の人民は、敗戦という事実を知った。

空襲をうけた日本の土地土地の地質が変化した。やけたあとの土に庭木は育たなくなった。そのかわり、猛烈な雑草の繁殖力があらわれた。ひとの背たけの倍ほどもある鬼蓼が昔、森鴎外の住んでいた観潮楼のやけあとにも生えた。

一九四六年一月から、日本の現代文学は、平和に向って解放された。人間性の恢復、人間として生きる諸権利の覚醒の声と動きに充満して、文学のすべての真面目な試みとすべての安易な云いのがれの、どれもが、日本文学における近代の社会性と人間性の確立の名のもとに行われた。

だが、きょう、わたしたちすべてが感じているのは、日本の文学の、もの足りなさである。納得のゆく方向に立って生活の実体とともに歩みすすめられてはいるのだが、その足どりは、まだるっこい、という種類のもの足りなさではない。現在、感じている日本文学のもの足りなさは、それが未熟だからでも、稚拙だからでもなく、それどころか、どの作品も趣向はそれぞれにこらしてあって、手綺麗に色もとりどりであるけれども、そのあまりにも多くが、駅の売店につられている派手なセロファン人形だ、という、そのもの足りなさである。