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ふざいじぬし

不在地主

小林 多喜二

一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页

青空文庫

この土地こそ、子より孫と代々相伝えて、此の畑は我が先祖の開きたる所、この樹は我先祖の植えたるものなりと言いはやされ、其の功は行末永く残るべし。」(「開墾及耕作の栞」北海道庁、拓殖部編)

「……実際、我国の人口、食糧問題がかくまでも行き詰りを感じている現今、北海道、樺太の開墾は焦眉の急務であると思います。そのためには個人の利害得失などを度外視して、国家的な仕事――戦時に於ける兵士と同じ気持を持ちまして、開墾に従事し、国富を豊かにしなければならない、こう愚考するものであります。」(某氏就任の辞)

「立毛差押」「立入禁止」「土地返還請求」「過酷な小作料」――身動きも出来なように縛りつけられている内地の百姓が、これ等に見向きしないでいることが出来るだろうか。――それは全くウマイところをねらっていた。

S村は開墾されてから三十年近くになっていた。ではS村の百姓はみんな五町歩乃至十町歩の「地主」になっていたか? そして、草小屋は柾屋に改築されていたか?

「誰も道で会わねばええな」

健達の一家も、その「移民案内」を読んだ。そして雪の深い北海道に渡ってきたのだった。