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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
――百姓が町へ行って、問屋に売る値段で、それを引きとってくれた。それで※は貸金の回収をうけると同時に、それを又売りして、そこから利ざやを――つまり二重に儲けていた。
在郷軍人分会長、衛生部長、学務何々……と、肩書をもっている※の旦那のようになりたい、それが小作人の「夢」になっている。――小作人達は道で、※の旦那に会うと、村長や校長に会った時より、道をよけて、丁寧に挨拶した。「青年訓練所」では、※の旦那が「修養講話」をやった。
夜道
健達は、士官の訓練が終って、※の「修養講話」になると、疲れから居睡りをし出した。「青年の任務」「思想善導」「農民の誇」……何時もチットモ変らないその講話は、もう誰も聞いているものがなかった。
外へ出ると、生寝の身体にゾクッと寒さが来た。霧雨は上っていたが、道を歩くと、ジュクジュクと澱粉靴がうずまった。空は暗くて見えなかった。然し頭を抑えられているように低かった。何かの拍子に、雨に濡れた叢がチラチラッと光った。
「もう一番終ったか?」――後から七之助が言葉をかけた。
健はたまらなく眠かった。「ええや、まだよ、人手がなくなってな。