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ふざいじぬし

不在地主

小林 多喜二

一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页

青空文庫

東京にいる、爵位のある大地主も、時々北海道へやってきて、小作人や村の人達を「家来」に仕立てて、熊狩りをやった。

――S村では、村長を始め※の旦那、校長などは大臣でも来たように「泡を食って」いた。

地主、奥様、御令嬢

自動車二台が真直ぐな村道を、砂塵を後に煙幕のようにモウモウと吹き上げながら、疾走してきた。岸野農場の入口には百十七、八人の小作が、両側に並んで待っている。町へ一日、二日の「出面」を取りに行っているものも休んで出迎えた。

暑かった。皆は何度も腰の日本手拭で顔をぬぐった。

「もう少しな、俺達の忙がしい時にな、来てもらったらええにな。」

「働いてるどこば見てければな。」

「ん、ん、んよ。」

「奥様は何んでも女の大学ば出た人だと。」

「大学?――女の? ホオ!」

「とオても偉い、立派なひとだとよ。」

「女、大学ば出る? 嘘云うな、女の大学なんてあるもんか。……まさか、馬鹿ア、女が……。」

「んだべ、何んぼ偉いたって!」

一かたまり、一かたまり別な事を云っていた。

「な、旦那もう少し優しい人だら一生ケン命働くんだどもな。」

「働いだ事無えから分らないさ。