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ふざいじぬし

不在地主

小林 多喜二

一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页

青空文庫

位は小作料だけで、ドシドシ消却出来た。

――健にも分る。これだけのことを見ても、結局の背負いどころは誰か。――小作人と土方! それがハッキリ分る気がした。

「アッ!」誰か叫んだ。

トロッコが土煙をたてながら、顛覆した。裏返えしになったトロッコの四つの車輪だけが、惰勢でガラガラと廻った。――乗っていた土方は土の下になってしまった。然し、誰もそれにかまっていない。――日雇いに行っている健達は思わず立ち止って、息を殺した。

「次のトロッコが矢張りな、見るに見兼ねて、少しグズグズしてたッけア、止っちゃいかん、止っちゃいかんッて、棒頭が怒鳴ってたど。」

健達は今度S村附近に陸軍の演習があるので、その宿割を受けていた。

「兵隊さんだけには、白い飯食べさせなかったら、恥だからな。」

母親に何度も、何度も云われて、稼ぎに出ていた。然し村から稼ぎに行っているものは、三日と続かなかった。途中でやめてしまった。

「ま、俺達途中でやめれるからええが、土方達はどうする……」

帰り道は、身体中痛んだ。肩がはれ上って、ウミが出た。

「土方人間で無えべ。――土方と人間が喧嘩したって歌あるんだからな……。