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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
仲々それも一寸見は分らないようにやるんだから危いんだ。――水も洩らさない。何んにも知らない百姓は、んだからウマウマと、そのからくりに引懸かってしまうんだ。」
「面倒だて!」――伴は日焼けした顔を大げさにしかめた。「仲々な!」
「はがゆくてもよ、豆粒みたいによ、俺達のどこさよ、一人一人よ、殖やして来るんだな。」
「何アんでも一人じゃ脆いもんじゃ。」――畑か田のことより知らない、歯の抜けている四号の茂さんが(!)そんな事を云う。
農民組合の荒川さん
表で犬が吠えた。
「荒川さんだべ。」――阿部が立って行った。
「や、失敬失敬。」
そう云って、ズックの鞄をドサリと投げ出した。痩形の、少し左の肩が怒っている二十二三の人だった。髪を長くしていた。
「ご苦労さまでしたな。」
「イヤ、イヤ。」
荒川は上ってくると、「ヤア。」と云って、元気よく皆に頭を下げた。そして真黒に汚れた手巾で、顔から首をゴシゴシこすった。
「作は悪いね。――今年はこれア大したことになるね。」
「岸野さんがドウ出るか……。」
「どう出るかって?――」
後は笑談のように笑いながら、
「そんなこと岸野の農場で十年も小作をしていれば、もう分ってもいい頃だろう――なア!」