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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
の貸付けを受けなければならない。だが、そうすれば、今度は益※(二の字点、1-2-22)引き合わなくなる。大地主の存在がジリジリと圧迫していた。小作人より苦しんでいた。その癖、俺は地主様だという気持を、どうしても無くしない。どんなにヒッつぶれても、小作人達と同じ人間にされてたまるもんか、そう思っている。
健の家と川を隔てて向い合っている越後から移転してきている広瀬がそれだった。――首がギリギリに廻らなくなっているのに、土地も自分のものでなくなっているのに、自分の子供が由三達と遊ぶことを嫌った。――「なんぼ成り下がったって……。」
荒川は硫黄分でインキのように真黒になっているお茶を飲みながら、内地の農民の話をした。――内地では、小作争議で「ドンツキ」をやる。小作人が地主を無理矢理ひっぱってきて、逆さにつるして灌漑溝の水につけたり、上げたりやる。然し北海道のように、小作と一緒に村に住んでいる地主がいないので、「残念ながら、ドンツキは出来ない。」
「若しか岸野ばしたら、どうだべ。」――一人がいたずらに云った。
「岸野か、そうだな……。」
「そんな手荒なこと、なんぼ岸野さんだってな……。