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ふりょうしょうねんとキリスト
不良少年とキリスト
「新潮 第四五巻第七号」1948(昭和23)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,079 字 · 29 页
「オマエサンは、バカだから、キライだよ」
女房の血相が変る。怒り、骨髄に徹したのである。こっちは痛み骨髄に徹している。
グサリと短刀を頬へつきさす。エイとえぐる。気持、よきにあらずや。ノドにグリグリができている。そこが、うずく。耳が痛い。頭のシンも、電気のようにヒリヒリする。
クビをくくれ。悪魔を亡ぼせ。退治せよ。すゝめ。まけるな。戦え。
かの三文々士は、歯痛によって、ついに、クビをくくって死せり。決死の血相、ものすごし。闘志充分なりき。偉大。
ほめて、くれねえだろうな。誰も。
歯が痛い、などゝいうことは、目下、歯が痛い人間以外は誰も同感してくれないのである。人間ボートク! と怒ったって、歯痛に対する不同感が人間ボートクかね。然らば、歯痛ボートク。いゝじゃないですか。歯痛ぐらい。やれやれ。歯は、そんなものでしたか。新発見。
たった一人、銀座出版の升金編輯局長という珍妙な人物が、同情をよせてくれた。
「ウム、安吾さんよ。まさしく、歯は痛いもんじゃよ。歯の病気と生殖器の病気は、同類項の陰鬱じゃ」
うまいことを言う。まったく、陰にこもっている。してみれば、借金も同類項だろう。