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よのなかのために

世の中のために

小川 未明

「少国民の友」1947(昭和22)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,184 字 · 9 页

青空文庫

」と、おじいさんは、いわれました。

「おじいさん、そんなら、運命というものは、どんなものですか。」と、僕が聞きました。

「そう、運命とは、人間の力以上のものとでもいうのかな。」

「あまり、この世の中には、運命ということが、多すぎますね。」

「考えれば、そうもいえるのう。」

おじいさんは、机の上のすずりを手にとってながめていられました。

「運命なら、何事もあきらめるよりしかたがないのですか。」と、僕が、聞いた。

「まあ、あきらめるよりしかたはあるまい。だがお坊さんでもないかぎり、なかなかそうさとれぬものじゃ。だから、その悲しみを忘れるため、趣味に遊ぶということがある。歌を作るとか、絵をかくとか、字を習うとか、また碁や、将棋をするとか。わしなどは、一ぱいやり、畑へ出て、花造りをするのも、じつは、そのためなのじゃ。」と、おじいさんは、おっしゃいました。

けれど、僕には、そのお話が、なんだかなまぬるいような気がして、ぴんと頭へこなかったのでした。

おじいさんも、僕のようすで、そうさとられたとみえて、

「若いものには、わしの話はよくわかるまい。もう、おまえは、これから、叔父さんに、なんでもわからないことを、聞くがいいぞ。