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ちゅうよう
中庸
「群像 第八巻第六号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,104 字 · 33 页
足りない予算は俺がつくろう、思いきって自腹を切ってやろうじゃないかという気持をそろそろ起してはどうだ。仕事に身を入れれば、人間は自然にその心を起すものだが、軍人は村長になっても自腹が切れないか」
「そうだ。そうだ。自腹をきって金をつくってこい!」
どよめく声が起った。中には、軍人の罪ほろぼしをやれ、という声もあった。殿様のつもりか、という声もあった。いずれも余の臓腑をえぐる声であった。またしても軽率に言を発して、身をさいなむに至ってしまった。
余の生家は富裕ではなかった。余に残された畑の如きも、素人が耕して手があまるほどのものでしかない。幸い余が軍人時代に老父母のために新築したのが今日わが身の役に立っているのであるが、そのほかには蓄えというものもない。思えば、村長たるの給料によって戦後はじめての栄養を得ているような次第であった。余は茫然立ちつくしてただ一同のしずまるを待ったのち、
「諸君の言は余輩の臓腑をえぐるものがあった。諸君の叱責、まことにさもあろう。ここに深くお詫び致すものである。自分に貯えがあれば自腹を切りもしよう。また政治家たるの才があれば金策に奔走もしよう。