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ちゅうよう
中庸
「群像 第八巻第六号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,104 字 · 33 页
宿直の教員は校内の見廻りを忘れてぐっすりねこんでしまったのですが、約三時間後にふと目をさました時には校内は火の海だったのです。彼は見廻りは怠りましたが、火の気のあるべき筈のない校舎の方から火事が起ったことは明かなんです。怪火の原因はいまだに不明とされていますが、根作の放火は間違のない事実ですよ」
「かりにも消防団長が放火することもあるまい。彼は特に熱心な団長だったそうだね」
「熱心のあまりです。戦争を裏切る者は軍人ですよ。私も多少兵隊のめしを食っていますから、軍人が威張り屋で人一倍嫉妬心の強いことが身にしみています。奴らが一番願っているのは、国のことではなくて、自分の成功と、他人の失敗なんです。もっとも、軍人だけに限りませんや。すべて各界に於ける最大の裏切りは、その道の者が行うのですよ。何事によらず、そうですとも」
余はむしろ彼自身がそのような放火犯人にふさわしいと考えたが、彼の物腰も言葉もいかにも分別と落付きに富む風情で、変った様子は見受けられなかった。
しかるに次の日曜日に再び騒ぎが起った。羽生が単身学校にのりこんで、教室の床板をはいでいるというのである。