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ちゅうよう
中庸
「群像 第八巻第六号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,104 字 · 33 页
スカートの代りにもんぺを用いれば靴下はいらない。カスリの着物は綻びもつぎはぎも目立たないものだが、その洋服ではいもりがはらわたをだしたようだ」
「うまいわね。この村の男は東京の新聞よりも表現がうまいわよ。女のあらを探すときにはね。女をやッつけるのが村の男の一生の仕事らしいや」
小野マリ子との初対面はこんな風であった。まもなく宿直の男教員が登校したので余は暇を告げたが、かの男教員は余を見るより百年の仇敵に会えるが如くに詰めより、
「このバラック校舎で今年の冬を越させるのですね。窓ガラスは殆どわれてますよ。見えないのですか。教室の床は土間ですよ。雪がつもれば、教室の中は泥濘になるのだ。そんなところで子供に勉強させられますか」
彼は戸をあけて教室の内部を示した。余はそれには答えずに退去したのである。
余のこの村の生活は老夫婦二人ぐらしであったから、話題もおのずから限られて、不覚にもバラック校舎に床板すらも張られておらぬことを知らなかった。窓ガラスが大方われていることも知らなかった。上長に対してやや行き過ぎの嫌いはあるが、男教員の難詰もいわれなきことではない。