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ちゅうよう

中庸

坂口 安吾

「群像 第八巻第六号」1953(昭和28)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,104 字 · 33 页

青空文庫

毒消し売りの泊るはたごに泊りこんで、諸々方々を拝み倒して、あれだけのバラックがともかくでき上ったのですぞ。この私に、おくめんもなく、羞しいとは思いませんか。よくも、あなた、何一ツ苦心したこともないくせに、云えたものですね」

「貴意はよく分りました。御説の如くに書類を拝見して私の意見をのべましょうが、君はいささか亢奮しすぎている。私の言葉を一々誤解して聞きとっているように思う。互いに冷静を欠くことなく、よく話し合い、心を合せて村のために働きましょう」

余は羽生助役をなだめ、それからは約一週間がかりで古い書類に目を通した。彼の云う通りである。この村の不景気もさることながら、逆さにふっても血もでない村の財政である。それにつけても、彼の無慾な奉公ぶりは偉とするに足る。彼の東奔西走は一貫して手弁当であった。

彼の怒りはその努力の知られざるに由ってであろう。かく観ずれば彼の怒りもいわれなきことではない。余は知らざりしを恥じた。よって彼に不明を詫びたが、

「しかしだね。予算のないのは分るが、なんとか無理算段して学校の床を張ってやることはできまいか」

余が重ねてかく云うと、彼はまたしてもにわかに険悪な色を目にためて、