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ちゅうしゆうき
中支遊記
上村 松園
「画房随筆」錦城出版社、1942(昭和17)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,238 字 · 13 页
「杭州でお悪かったそうだが、いかがです」という風にたずねられた。
「お蔭様で、もうすっかりなおりましたので……」とお答えすると、
「それはよかった。然しまあ無理をしないように……」と言われた上に、追いかけるようにして、
「それからどんなことがあっても生水だけはのみなさるな」
と、細かい注意をして下さるのであった。これは常々兵隊の身を案じ続けていられる心遣いが私のような者の上にも泌みでるように出たお言葉であろうと胸に響くものがあった。大将こそ身体を御大切に、ついそう念じないではいられなかった。
これはまた汪主席にお会いしたときと、違った気持で、まことに感銘の深い思いであった。
光華門にて
南京の城内には博物館があると聞いた。私は大きな収穫を期待し、是非にと見物に出かけたのだが、先ず第一に絵画というものが新古ともに無いのに失望してしまった。或は戦争に巻きこまれぬ前はこうでもなかったのかも知れないが、まことに落莫としたものである。模様や字様のものの細々と彫っている大きな玉板であるとか、あまり風懐に富んでもいない石仏とか、いずれは考古学上にはそれぞれ由緒あるものであろうが、おかしな言い方であるが、妙に重いもの、かさばるものばかりであるといった感じだった。