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『ケプロン・くろだのこうそう』について

中谷宇吉郎集 第八巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第八巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『ケプロン・黒田の構想』について、桂浜、北国の春、金鱗湖、高度八十マイル、写真と暮らした三十年、寅彦の遺跡、南極・北極・熱帯の雪、百科事典美談、北海道開発に消えた八百億円、母性愛の蟹、娘の結婚、雪の化石2、六三制を活かす道、ピーター・パン。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,890 字 · 178 页

青空文庫

しかしそれでもまだ光は弱いので、当時のレンズでは、なかなか写らない。ダゴールのf6.8というのが、上等のレンズであった時代である。さんざん苦労をした揚句、クックのf2という収差のひどいレンズを手に入れて、やっとかすかな焔の像がうつることになった。ポートレート・フイルムという厚いフイルムが一番速かったので、それを苦心して円筒に捲きつけ、その円筒を回転しながら、伝播状態の写真を撮ったのである。

強力現像などは、もちろんなかったし、現像温度なども、そうやかましく言われなかった時代である。それでも温度を十八度だったかに保ちながら、三十分くらいかけて現像したら、やっと見えるか見えないくらいの像が出てきた。

この時言われた寺田先生の言葉は、その後ずっと大いにためになった。「何も写らないものを、とにかく写るようにするまでが、たいへんなんですよ。どんなに薄くても、何か写りさえすれば、あとは楽になる。実験というものは、どこを改良したかわからなくても、やっておれば、だんだん良くなるものだから」と教えられた。

果たして、その後根気よく、何枚も何枚も撮っているうちに、焼き付けが出来る程度の写真が撮れるようになった。