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なかざとかいざんの『だいぼさつとうげ』

中里介山の『大菩薩峠』

三田村 鳶魚

「日本及日本人」1932(昭和7)年10月15日号、11月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,523 字 · 27 页

青空文庫

と言う。一口にいう言葉のうちに、これだけ品位の違ったものが雑居している。百姓の娘が増長して、悪気取りをして、こういうむちゃくちゃをいったとすれば、それでいいかもしれないが、作者はそういう気持で書いたものとも思われない。

同じ頁で話が替って、神尾主膳という人の家のことになる。ここに「組頭や勤番が始終出入してゐました」と書いてあるが、これは「甲府勤番」とすればいいでしょう。次の頁に、主膳の家で刀の話をしていることを書いて、「貴殿の鑑定並びに並々方の御意見を聞いて置きたい物がある」これは主膳の言葉なのですが、この時分には「意見」という言葉を、こういう意味には遣っていないように思う。もっともこういう言葉にしても、ここの会話が全部現代式であれば、釣合がとれなくもないが、古い言葉と新しい言葉とがごちゃまぜになっているので、余計変なのが目立ってみえる。同時に話が嘘らしくなってくる。

五八二頁になると、前に出た有野村の百姓大尽のところへ、勤番支配の駒井能登守が来ることが書いてある。しかも先触れも何もなしに、能登守自身でやって来た。「新任の勤番支配が何用あつて、先触もなく自身出向いて来られたかと云ふことは、此家の執事を少なからず狼狽させました」