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くぼたべいさいくんのおもいで
久保田米斎君の思い出
岡本 綺堂
「伝記」1937(昭和12)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,435 字 · 17 页
仮に米斎君のやった舞台装置を他の画家が見に来るとします。米斎君の方では芝居の都合を考えてやった事でも、久保田君はあんな事を知らないか、という風になりかねない。専門家とすればそこがむずかしいわけでしょう。批評する方に芝居気があればいいけれども、まるで帝展の画でも見るような調子で、直ぐに物を識らないといって非難されては困る。自分の立場もある程度までは守らなければなりますまい。昔なら「そこが芝居だ」という迯道があったので、「野暮をいうな」位で話は済むんだが、今ではそう簡単に行かないから面倒です。
これは芝居の方も悪いのです。狂言を決定するのが非常に遅い。というと、それは私たちが書くのが遅いからだと順押しになりますが、五月なら五月の芝居に何を出すか、それがはっきりきまるのは前月の二十日頃なのです。警視庁の方では、二週間以前に脚本を提出しろということになっていますけれども、マア三、四日のところは御目こぼしがあるんでしょう。いよいよ上演するまでに十日位しか余裕がない。それから急に舞台装置とか衣裳の考証とかいう方を頼みに行く。米斎君はじめ、不断から用意のある人だからいいが、そうでなければ忽ち困る話です。