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きゅうしゅうのひがしかいがん

九州の東海岸

宮本 百合子

「読売新聞」1926(大正15)年6月1~3日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,091 字 · 7 页

青空文庫

樹幹の風致を充分味わせながら、当然青葉若葉も瞳に映る。明るく、確りしてい、同時に溢れる閑寂を感じる。

私の狭い経験で東京や京都の凝った部屋の植込みが、こんなところは知らない。坐ると、第一に植込みの葉面が迫って来る。種々錯綜した緑の線、葉の重なり。ここでは緑に囲まれて坐るというところによさがあり、九州――臼杵で見た庭は、心が自ら樹間を逍遙する宏やかさがある。

九州へ一度も行かない人は、九州という処をどう想像するだろう。樹木なんぞこんなに細そり、山は円く、入江の多い、こまやかな景色の処と考えるだろうか。私は滑稽なことだが九州というと、線の太い、何処か毛むくじゃらなところがある土地のように思っていたから、自然でも随分思いがけぬ優しさ、明るさにおどろいた。雪の降らない暖国では樹木がこうも、さやさや軽く真直ぐ育つものか。かえりに京都へ寄り、急に思い立って大原へ行った。これはまた、何と低い新緑の茂み! 背の低い樹々が枝から枝へ連って山々、谿々を埋めている。寒い土地の初夏という紛れない感じで感歎した。

青島は、なかなか有名だ。大抵の人が知っていた、是非行って見ろと云う。