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くねんぼ

九年母

青木 正児

「あまカラ 8月号 第六十号」甘辛社、1956(昭和31)年8月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,509 字 · 5 页

青空文庫

夏に家の近くの海で泳ぐ時、もぐっては石崖に付着しているこの貝を取るのが面白く、十数個もたまると持って帰って茹でてもらい、木綿針の先で、ぐるっと廻して、ほじり出しては食べる。よい加減の塩気があって磯くさく、旨いというほどでもないが、楽しいことであった。泳ぐ時、底にもぐるとミルがいくらでもあるので、子供たちは取って遊んだ。何にするというでもない、ただ取るのが面白く、あとはそこらに捨てて帰るのである。後年京都に来て驚いた。刺身の妻にミルが付けてある。あんなものを食べるのかと、海に遠い京都の人を気の毒に思った。

最後に私の最も好んだ海味を一つ付け加えるならば、それはメノクキである。「芽の茎」という意味らしいが、若布の生え始めに芽が五、六寸か七、八寸伸びて、まだ葉の出ない前の茎である。ゆえに完全には「ワカメのメノクキ」と呼んだ。これを適宜に切って三杯漬にすると、こりこりとして歯切れが良く、何とも言えぬ味のものであった。今食ったら、さぞかし酒の肴に珍妙であろうが、いやもう駄目だ。こう歯が悪くなっては。

(あおき まさる、京大名誉教授・中国文学、三六・七)