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くだん
九段
「別冊文藝春秋 第二〇号」1951(昭和26)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,870 字 · 20 页
こういうこともあろうというので、新聞社、雑誌社、モミヂ旅館、いずれも要心おこたりなく、上京宿泊中は誰にも知らせず、どこにも分らぬように仕掛けが施してあるのだが、この時は原稿に一段落してちょッとヒマがあったから、折からの来客と共に酔いつぶれたのだろう。
翌朝、目をさましたところは九段である。その待合の女将は今は故人になった落語家の雷門助六の奥さん。角力のように背が高くてデップリふとっていて、大酒のみで、ジメジメしたところのない人物である。人生を達観していて一向にクッタクがない。こういう豪傑然とした婆さんは珍しいが、抜けるところは甚しく抜けていて、いわゆる女将型のりりしいところはなく、ノンビリ落ちつき払っているだけなのである。
私が目をさますと風呂の用意ができている。一風呂あびて、婆さんと飲んだ。
私がモミヂから着て出たユカタは大男の私にはツンツルテンであった。
「ウチにちょうどよいユカタがあるよ」
と云って、婆さんが持ってきたのは、九段の祭礼用のお揃いのユカタであった。ちょうど九段の祭礼の前夜か前々夜に当っていたらしく、花柳街はシメをはりチョウチンをぶらさげていたのである。