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ちちをさす

乳を刺す

邦枝 完二

黒門町伝七捕物帳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,474 字 · 35 页

青空文庫

「わたしが廊下へ出ました時、手燭の光に、驚いたように振り返りましたのは、もうずっと向こうへ行って居りましたが、確かに常どんでございました」

「常吉?……」

源兵衛が、びっくりしたようにオウム返しに問い返した。

「あの廊下は、姉さんの寝ている離れから、台所まで行くようになって居ります。その途中から、常どんが小僧達と一緒に寝ている部屋へ、曲がるようになって居りますので、その時は、何とも思ってはおりませんでしたけど、あれは姉さんの所へ、行った帰りだと思います」

「そうか。……他に何か今度のことについて、気のついたことはねえか」

「ございません」

「よし。じゃアお前さんは、あっちへ行って、小僧達を呼んで来ねえ」

「はい」

重苦しい空気が、一同の前に流れた。

「常吉に限って……」

「でも、……そう云えば、お由利のことというと、夢中になる方ですからね。きのうだって、自分一人で迎えに行くなんて、云ってたじゃござんせんか」

源兵衛がお春の言葉を耳に掛けない様子に、お牧は同調しなかった。

「小僧達を、連れてまいりました」

「………」

お春の後ろへすわった小僧達は、互いに顔を見合わせて、おどおどと落ち着かなかった。