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ちちをさす

乳を刺す

邦枝 完二

黒門町伝七捕物帳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,474 字 · 35 页

青空文庫

「冗談云っちゃアいけません。親分、ま、待っておくんなせえ」

梅窓院通りから、百人町へ足を速めて行く伝七は、獅子っ鼻の竹を、いい加減にあしらいながら、何か思案に耽っている様子だった。

「竹、おめえに、働いて貰う時が来たぜ」

「えッ、あっしに?……有難え」

「ほかじゃねえが、これから赤坂御門外へ行って、溜池の麦飯茶屋を、洗ってくんねえ」

「あすこの茶屋なら、六軒ありやしてね。女の数が三十人。いま評判なのア、お滝におつま……」

「女を知りてえんじゃねえ。ゆうべ五ツ頃から、今日の明け方までに、どんな客が上がったか、そいつを調べて来るんだ。こっちの目当ては、鴎硯という茶坊主だが、まだ外に、拾いものがあるかも知れねえからな」

「へい。ですが、茶坊主が、なんであすこへ行きやすんで?……」

「ゆうべ伊吹屋からの帰りに、源兵衛が如才なく、二分や一両は、握らしたに違えねえ。坊主の住居は、浜松町だそうだから、丁度都合のいい足溜まりだ。しけ込んだ上で、何を企むか知れねえって奴だ」

「成程」

「伊吹屋へ上がり込んで、みんなの機嫌を取るような坊主だ。お城から、誰に何を云いつかって来てるか、知れたもんじゃねえから、抜かっちゃならねえぜ」