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ちちをさす
乳を刺す
邦枝 完二
黒門町伝七捕物帳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,474 字 · 35 页
「岩、てめえの話ア、騒々しくっていけねえ。黒門町もいる事だ。もうちっと落ち着いて話をしねえ」
「いや北町の」
しかりつける留五郎を、笑いながら伝七はとめた。
「あわてる方じゃ滅多に退けを取らねえ男が、こちらにもいるんだ。おいらア、あわて者にゃ慣れてるから、ひとつ、今のつづきを聞かして貰おうじゃねえか」
「冗談じゃありやせんぜ」
と獅子っ鼻の竹が首を振った。
「親分。何も青山くんだりまで来て、あっしを引き合いに出さなくっても、ようござんしょう」
「ははは。人ア、引き合いに出されるうちが、花だと思いねえ。……ところで岩さん。筋アどういうんだ?」
岩吉は、ごくりと固唾を呑んだ。
「実ア梅窓院通りの、伊吹屋の娘でござんす」
「じゃア大奥へ勤めている、お由利だな。いってえどこで殺されたんだ」
留五郎も思わずひとひざ乗り出した。
「ゆうべ、自分の家へ帰って来やしてね。大勢で祝いの真似をして飲んだり食ったりして、寝間へ這入ったそうですが、今朝お袋が起こしに行くと、胸元を一突き、もう冷たくなってたという話なんで……」
「うーむ」
「当人は、星灯ろう見物の、お供で来たんだそうでしてね。