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ちぶさ

乳房

宮本 百合子

「中央公論」1935(昭和10)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,932 字 · 56 页

青空文庫

と告げた。

「いつ!」

「さっき!」

「小倉さんは?」

「いる」

その朝の新聞に、市電争議打ち切りが出た。タミノは、立ったまま新聞をひろげて見ていたが一遍おろしたのをまたとり上げ、

「あたしたちが、こんなことを今朝になってブル新で知るなんて。――何てくやしいんだろ」

と云った。その直截な表現は、ひろ子の心持とも云えた。お花さんが、その話をきいて、

「あれ、あたし困っちゃったな、近所せわりいようでさ。ストライキするからってたとい一銭にしろ、袋せ入れてむらったんだもん……ねえ」

基金を出した親たちに、争議は従業員が実力を出して負けたのでないことを説明したビラを刷る、その仕度をタミノはさっき迄していたはずなのであった。

小倉は、入って来るひろ子を見ると、

「ああ、よかった!」

まるでたぐりよせられるように立って来た。

二人の特高が、まるで何でもないようにやって来て、ろくに物も云わずいきなり二階へのし上った。すぐつづいてタミノがついて上り、降りて来たのを見ると、一人の特高が手に赤インクで、「赤旗」と題を刷ったものを持っていた。それでタミノの顔をぶった。

「しらばっくれんな、貴様党員じゃないか。