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よこくさつじんじけん

予告殺人事件

坂口 安吾

「東京新聞」1945(昭和20)年8月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,258 字 · 3 页

青空文庫

要するにスポーツ、スリル、セックス、品は変れども同趣味で、執拗なる根気と、術策と手管、之が彼等の日常の人生であり趣味であり信条だ。

戦術といえども日常性を以て推測すべからざる深遠な秘法があるわけではなく、むしろアメリカの戦法は三Sの延長であり、その術策手管の挙国総力的な集大成に外ならぬと思われる。

ところが、日本人は探偵小説に於けるアメリカの被害者達とは全く類を異にしている。日本人は概してユーモアに乏しく、又之を好まぬ傾向があるが、実は根柢的に楽天的な国民で、日本人がシンから悲観し打ちのめされるなどということは殆ど有り得ぬ。

私の隣組は爆弾焼夷弾雨霰とも称すべき数回の洗礼を受けたのであるが、幼児をかかえた一人の若い奥さんが口をすべらして、敵機の来ない日は淋しいわ、と云ったという。私は之をきいて腹をかかえて笑ってしまったが、全く日本人は外面大いにつらそうな顔をして毎日敵機が来て困りますなどと云っているが、案外内心は各※(二の字点、1-2-22)この程度の弥次馬根性を持っているのではないかと思った。

焼けだされた当座はとにかくやがて壕生活も板につけば忽ち悠々たる日常性をとりもどしてしまう。