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よかん
予感
山川 方夫
「現代挿花」1961(昭和36)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,904 字 · 4 页
学年試験のとき、入社試験のとき、そして妻とはじめて会社のそばの喫茶店で出逢ったとき――もっとも、このときは全身がガタガタとふるえつづけ、吉か凶かの差違がよくわからなかったが、――ともあれ、かならずこの戦慄が、結果を彼にあらかじめ教えたのだ。
でも、妻はそれを信じない。信じないどころか笑いとばし、しまいには怒りはじめるのだ。それはたいへん彼のプライドを傷つけることだったが、彼は我慢をして、近ごろでは、なるべくその予感を口に出さないようにしていた。予言者というものは、がんらい孤独なのだ。――でも……でも……。
幾重にも屈折する道を、大型のバスはあえぐようなエンジンのうなりをあげ、かなりのスピードで坂道にかじりつくように登ってゆく。窓ガラスに青空が旋回して、タイヤからはじけとぶ小石が弧を描いて音もなく崖の下に吸いこまれる。……もう、黙っていることはできない。彼は立ち上った。
「おい、下りよう、このバス」
「なんですって?」
妻はぽかんとした。
「危いんだ。ほら、あの例のやつでぼくにはちゃんとわかる。きっと、このバスは転落する。ぼくたちには、死の危険があるんだ」