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ふたつのいえをつなぐかいそう

二つの家を繋ぐ回想

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,480 字 · 37 页

青空文庫

今までの、何時、彼方から呼ばれるか判らないと云うような気分もなく、一寸、仕事がつかえても、行って見ようかな、と云う遊び心に動かされず、当分は、却ってさっぱりと、心が落付いたような気分がした。

国男さん、英男、スエ子も時々遊びに来る。その度に母の様子を間接にきき、彼女が、あの時、逢わずに死ぬかも知れないと云われたような切迫した心持では居ないらしいのを聞いて、私に安心する。彼女の方でもきっと、皆に、それとなく自分の様子を尋かれるのだろう。

始めの間は、皆が、事の内容を知らず、何かあったらしい位で居たらしい。然し、時が経つに連れ、祖母が私可愛ゆさから気付き始めた。

「何故、近頃は百合子もAさんも来ないのか。何かあったのか」

しきりに気を揉み、私の家にも来、声をひそめ、眉をあげて、訳をきかれる。

八十の老女に云ったとて、判ることでもなし、自分は只、微笑した。それでも満足されないと

「いつかゆっくり行きますから、安心していらっしゃい」

と云う。

けれども、母が、自分の胸一杯にある感じに負け、会田さんに万事の輪廓を話してから、母と我々との不調和は、少くとも家内では公然なものとなった。