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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

皆さんも、折角教育をうけ、教育者として活動しようとしておられるんですから、このところをよく考えて、下らない新しがりはおやめになるのが賢明であると思います」

ほとんどあっけなく早川閑次郎の話は終った。日本語のわかるものの顔には、彼の話の真意をなんと解していいのかわからない、ばかにされたような期待はずれの感情がみなぎった。

伸子はあきたりない思いをもってきいているうちに、だんだん不愉快になった。猫が、犬のように飼主にこびず、ある意味での親愛感や共感なしに、冷然と飼われているそのエゴイズムが面白い、と書いているこの評論家は、この話で、皮肉な逆説として、男を食う女になって、男尊女卑を現実で裏がえしにしてやれ、といおうとしているらしく思えた。けれども、彼のひとひねりしたそういう話しぶりは、一般のききてに通用しないものだし、まして彼の論法はひたむきな向上心と観察欲にもえてここへも出席して来ている中国の女学生たちのこころにふれるものではない。伸子は、この評論家が、何につけても、これまで在るものをただそのまま裏がえしにしてしゃべるしか能のないことをおどろいて、気持わるく発見した。