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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

母は五十二であった。越智圭一は、はっきりは知らなかったが三十二三の男である。自然なものとしてその二人の結婚などということを、伸子には想像出来なかった。伸子は、おびえたような眼色になった。

「――結婚て――ここの家を出て?」

「それゃ、どうしてもそういうことになるね」

上気して、まばたきこそ繁いけれども多計代は落着いて答えた。

「伸ちゃんは、どう思うかい?」

「あんまり不意で……それゃ私たちは大きくなったんだし、お母様がどうしてもそうときめるんなら、とめられないことかもしれないけれど……でも、変だ!」

伸子は俄かに正気づいたように坐り直した。

「本気なの?」

「――結局そうしかしかたがないと思うのさ」

だんだん伸子は平静をとりもどした。そして、母のこの唐突でしかも重大な話が、抑えかねる情熱的な焔のもえたちとして出されているというよりも、むしろ何かもうすこし別な動機から出ているらしいことを感じはじめた。おぼろげに直覚されたその別の動機までさぐりつこうとするように、伸子はなおじっと多計代を見つめた。

「そうなったとき、お母様は、自分の経済力をもっていらっしゃるの?」