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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
一人は太いステッキをついていて、それが先頭に立っていた。
伸子は、
「わたし、佐々伸子ですが――御用?」
そうきいた。
いく日も風呂に入らないでよごれたままの顔、おそらく、朝まともに顔も洗わないで出て来たらしい三つの青年の顔が、六つの眼を紫メリンスの前かけ姿でそこに現われた伸子の上にすえた。誰一人挨拶の頭を下げず、荒っぽそうに、いかつそうに粗暴であるが、その眼のなかや口のはたにおさえきれない若者らしさや好奇心が浮んでいる。こういう若いよごれ、手荒さは伸子の知らないものではなかった。二十三歳の美術学校生徒である弟の和一郎のあるときの表情に共通な、はにかみの裏がえされた傲慢がある。伸子は、自分の側からも好奇心をうごかされながら、
「どういう御用なのかしら」
ときいた。
「――紙をわたしたんだが……」
「紙は見たけれど――あなたたちにお会いするの、はじめてでしょう」
「…………」
「あなたがた、アナーキスト?」
ステッキをついている黒ルバーシカの青年が、
「そうだ」
と短く力を入れて答えた。
「そういう人たちで、うちへ来た方はあなたがたがはじめてです……」
伸子は、どこかで読んだいいかたを思い出し、