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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
伸子たちは小さかったころ、その夫妻をおじさま、おばさまとよばせられた。
保は、この間、佐々は、ばかだ、生れつきの調停派だ、といわれたと伸子に話した。それは、保の通学している七年制の坊っちゃん風の高校にさえも、調停派でない学生たちの気分があるということではないだろうか。もし、保がちがった生れつきで、生れつきの調停派でなかったなら、多計代がかつておじさまとよばした、その大臣に、やはり保も処分されただろう、断然と。彼はとりも直さず、その文相であり、保はその学生なのだから。
この春、前崎にある佐々のうちへ、大磯の別荘から、萬亀子夫人が遊びに来たとき、多計代はいあわせた泰造はもとより和一郎まで加勢させて、箱根へドライヴしたり、力をつくしてもてなした。僕、へこたれちゃった、袋もちさせられて。一分刈の頭でカラーなしの制服姿の和一郎は、その日じゅうおばさまの手提袋をもってあげる役にあてられたのであった。一方的な、多計代のそういう熱中や奉仕ぶりを思うと、伸子には、それがさもしくけちけちしたことに思えた。あきるほどちやほやされつけている大臣夫人を、多計代のような古い幼な友達までが、世間並の方法でさわぐのはばかばかしかった。